分棟のファサードで個室診療をアピール

矢野歯科医院

2004年 新築

広島県三原市本郷町本郷1428-5

TEL



日本建築家協会 優秀建築選 選出
現代日本の建築家2005 掲載
日経アーキテクチュア2004年10月18日号 掲載
商店建築2004年9月号 掲載
商店建築増刊3月号 クリニック&オフィス 掲載
まちなみ住宅100選 奨励賞






広島県三原市本郷町の駅前で
地元住民に愛されながら診療を続けてきた矢野歯科医院。
3代目の矢野浩介先生による
新しい診療システム導入と
より良い診療空間を提供することを目指し
近隣で行われる開発事業を機に
新築移転することになりました。

古い建物が残り 山を見渡せる地域ですが
敷地周囲にはスーパーマーケットの駐車場として
アスファルトが広がります。
主な交通手段が自動車である郊外では
スーパーマーケット横であることの
認知されやすさのメリットは都心部の駅前に値しますが
乾いた環境にはなんらかの補いが必要だと思いました。

プライバシーに配慮する意味で
個室診療は患者には好ましいものです。
しかし診療する側には効率が悪く 煩わしいことが増えるので
踏み込むには勇気がいる領域のようです。

大きな努力の結果として
はじめて可能になる個室診療システムを
外観からも感じられる形態にすることにしました。
各診療室と待合室を箱として配置し
その隙間を外部空間として開放します。
開口部の外には植栽を施し
アスファルトや通行する自動車との視覚的な緩衝帯としました。
外壁の一部は焼き杉風です。
新旧の素材が混在する構成により
地域特有の記憶による潤いを補えるようにしました。
白壁と黒壁のコントラストには
ロードサイドのロケーションゆえに
車中より認知されやすいインパクトを感じさせる機能もあります。

歴史ある医院の記憶として
内部空間にも新旧の雰囲気を対峙させています。
シンプルな壁面に対し
高い天井は木の構造部材を露にしました。
診療室にて天井を見ることが多い患者の視線を誘導します。
オペレーションへの配慮として 患者に見せていいものと
そうでないものを視覚的に整理しています。

玄関ロビーと待合室には 植栽と空を取り込み
自然と向きあうことによる安静が感じられるようにしました。
シンプルで明るい清潔感がある空間のフレームで切り取った
透明ガラス1枚の距離感の自然から
非日常的な よそ行き気分の興奮を
感じることができるように考えました。

矢野浩介先生の やさしいお人柄と柔軟な考え方がなければ
この時代につくることができなかった
とても気持ちいい歯科医院です。
私たちがクリニックの設計をする契機を与えてくださった
矢野浩介先生に感謝いたします。














コンサルティング デンタルクリエイトセンター 酒井珠材
構造設計 木谷構造設計事務所 木谷正
設備設計 エマ設計事務所
照明計画 遠藤照明 井上智津子
ロゴデザイン アースピッグスタジオ 小堀多華子
撮影 山田誠良   
撮影 カルダンプロ      
施工 下岸建設株式会社 河野則秀
造園 清勝園 羽出重勝太郎

建築面積 146.69 ㎡   延床面積 141.93㎡