落ち着くホテルのような自費診療空間

安田歯科医院

2005年 新装(ビル診 内装・ファサード)

京都府京都市中京区 御幸町通御池上ル亀屋町375-1

TEL.075-254-0333

http://www.yasuda-dc.com/



京都デザイン賞 2009年 入選
商店建築増刊3月号 クリニック&オフィス 掲載
商店建築 2006年1月号 掲載
Meets Regional 2005年11月号 掲載
アポロニア21 2008年9月号 表紙掲載








自費診療中心の歯科医院で研鑽を積んだ安田先生は
京都市役所横で大通りに面する新築高級マンション1階の
注目の場で独立開業することになりました。
昔ながらの住民と新しい住民双方の生活スタイルの中で
地域交流を深めることができる医院にしたいと希望されていました。
併設する技工士の独立したラボの窓を通して
精密な作業風景を公開し
道行く人々に歯についての関心を高めることも考えていました。

自費診療を行う歯科医院の空間には
患者の快適性と高級感は不可欠です。
30代前半ながらも高い技術と多くの肩書きを持つ安田先生は
働く側の都合だけで計画された
従来の医院のありかたに疑問を持っていました。
開業医院では診療技術以外の部分について
従来の歯科医院のイメージを
大きく裏切りたいと考えていました。
空間全体を支配する色彩を基本から考え直し
高級ホテルで受診しているような落ち着きとサービスを感じさせる
医院としては大胆な“こげ茶”という色を選択をすることになります。

“こげ茶”は京都の古い町並みを連想させる色でもあります。
要素に対しての狭さの克服と高い天井の活用のために
狭く高い路地を内部空間として再構成し
転写的な発想を読めないくらいに造形を抽象化し
新旧の住民に新鮮さと懐かしさを
同時に感じてもらえる現代的な空間しようと思いました。

横への広がりは限られていますが
ミラーにて空間領域を曖昧にすることにより
圧迫感を取り除いています。
幾何形態の造作を重ねて
壁面や床面などの機能的要素から目を回避させ
視点移動にて見えるものが大きく変化するような
風景をつくり出すことを考えました。
光の反射が期待できない“こげ茶”ゆえ慎重な照明計画が必要です。
点光源や行灯照明の数を増やし
間接照明には蛍光灯トラフを使用して光量を増やし
華やかさを補っています。
廊下にはキセノン球を使い光源数の多いペンダントライトを製作し
ミラーにて視覚的に数を倍増させ
外部からも華やかに見えるようにしました。
日没が近づくと光源だけではなく内部の造形要素が徐々に浮き上がり
外部に滲みだしてきます。
日没後も魅力的な都市型の雰囲気を持つ
歯科医院になったと思います。

安田先生は“僕は運がいいんです”と言います。
医療技術の自信と明るく前向きで謙虚な人柄が
周囲の人を動かすゆえの賜物と納得します。
その運の良さに導かれるように
関わった人たち全員が満足する医院になった気がします。
器としての医院は構えたつくりですが
頼りになる技工士さんと明るく丁寧な衛生士さんたちのおかげで
緊張を強いることなく癒される素晴らしい歯科医院となりました。
工事種別 新装
施工 株式会社 京阪都市設計
撮影 山田誠良
ロゴデザイン アテラ 新山愛子

延床面積 83㎡ 25坪