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自費診療中心の歯科医院にて研鑽を積んだ安田先生は、京都市役所横で大通りに面する新築高級マンション1階という注目の場にて独立開業することになりました。昔ながらの住民と新しい住民双方の生活スタイルの中で喜ばれ、地域交流を深めていくことができる医院にしたいと希望されており、併設する技工士の独立したラボの窓を通して精密な作業風景を公開し、道行く人々に歯についての関心を高めてもらうことも考えていました。 自費診療も行う歯科医院の空間には患者にとっての快適性と高級感は欠かせない要素です。30歳代前半の若さながらも多くの技術と肩書きを持つ勉強熱心な安田先生は、働く側の都合のみで計画された従来の医院に疑問を持ち、開業医院では診療技術以外の部分については従来の歯科医院のイメージを大きく裏切りたいと考えていました。空間全体を支配する色彩を基本から考え直し、巷に溢れる“パステルカラーや既製品装飾部材の建売住宅的多用=ファンシーなテーマパーク風ヨーロッパテイスト”の医療空間イメージに対して高級ホテルで受診しているような落ち着きとサービスを感じさせる“こげ茶”という医院としては大胆な色彩を選択をすることになります。 “こげ茶”は即ち京都の古い町並みを連想させる色でもあります。要素に対して面積の余裕がない狭さの克服と高い天井の活用のために、狭く高い路地空間の魅力を内部空間として再構成し、転写的な発想を読み取ることができないくらいに造形を抽象化し、あくまでもさりげなさを装うことにより、新旧の住民に新鮮さと懐かしさを同時に感じてもらえる現代的な空間にできればと思いました。 横への広がりは物理的には限られていますが、ミラーにて視覚的な空間領域を曖昧にすることにより圧迫感を取り除いています。幾何形態の造作を重ねることにより、壁面や床面などの静態的な造形要素に目を留めることを回避させ、視点移動に伴い、見えるものが大きく変化するような風景をつくり出すことができました。 光の反射が期待できない“こげ茶”ゆえ、慎重な照明計画が必要です。点光源や行灯照明の数を増やし、間接照明には蛍光灯トラフを使用して光量を増やし華やかさを補っています。廊下にはキセノン球を使い光源数の多いペンダントライトを製作し、ミラーにより視覚的に倍増させ、外部からも華やかに見えるように設置しました。日没が近づくと光源だけではなく内部の造形要素が徐々に浮き上がり、外部にアピールしてきます。日没後も魅力的な都市型ならではの雰囲気を持つ歯科医院になったと思います。 |
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