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デザイナーズマンションが今ほどメジャーでなかった時代の、デザイナーズマンションの住戸内の部分改装です。当時のデザイナーズマンションは外装と共用部に力を入れ、各住戸内は平凡な間取りに通常のマンション仕様であることが一般的でしたので、その部分への施主の不満が改装の動機となりました。

大きな開口部を持つ吹き抜けがあるメゾネット型なので、あらかじめ空間的には恵まれています。照明効果の多様性によって、この空間の魅力を引き出すことを考えました。高い天井の開放感を損なわないように、ペンダントライトは吊らず、AVセットなどを収納できるクローゼットを、照明器具として機能させる計画としました。扉面のフロストガラスから洩れる鉛直照明と、クローゼット上部に設けた壁面を照らすアッパーライトの照明回路を分岐し、”あっちを点けて、こっちを消すこと”によって、雰囲気を変えることができるようにしています。またクローゼットを開けると、扉面の鉛直照明が機能しなくなり、テレビとその上部の飾り棚が新たな照明器具となります。当然ながら昼間は太陽光が射し込みます。ひとつの空間に、いくつもの顔を持たせることができたと思います。

施主は中年齢の目の肥えた御夫妻です。お子さまは既に立派に巣立っておられ”生活感のない生活”を希望されていました。要素として、木製の材質を使用せずに、床も白にしたいとの要望がありました。かねてよりシンプルな白床の居住空間をつくりたいと思っていましたので、このような要望は嬉しいものです。”汚れが目立つゆえに、まめな掃除をすること”あるいは”汚れを気にしないこと”を覚悟できるほどの、理想の生活に対する施主の思いの強さや、優先順位を明確に選択できる力が、実際に出来上がるものを平凡なイメージから遠ざけます。非日常→生活感のない空間に近づけていくことが容易になるのです。

玄関を入った正面の黒いゲートを、斜めにずらして配置しています。これは、玄関からリビングやダイニングが直接見えないようにとの一般的な配慮であるとともに、ゲートを抜けた時の開放感をより劇的にする演出でもあります。ゲートにはめ込んだテンパーガラスドアのまわりの発光するスリットが、ドアの開閉ごとに光を周囲に拡散させます。無機質な空間の中で、自分自身の動きを対象化して感じることができるような、動的な造形として盛り込みました。

施主に覚悟がないとできないことをやらせていただき、改装をとても喜んでいただけるとは、設計者としてとても幸せなことです。

 
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